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執筆者の写真富山県こどもこころの相談室

居場所について臨床現場からの問い⑭

#14


 このような自己理解を基にして、そのような状況になったときには、どのような対処をすることができるのか、Cさんと一緒に考えた。そして、考えたことを新しく通い始めたFフリースクールでの生活で実践した。上手くいくこともあったが、上手くいかないこともたくさんあった。相談では、上手くいったことを共に喜び、上手くいかなかった要因は何だったかということについて整理し、新しい対処方法を考えて、それを実践するという試行錯誤の連続を繰り返す中で、結果として学校復帰をしていった。

 このプロセスは(*1)貴戸理恵が述べる『自己の内部に抱えられた葛藤が、言葉になって場に差し出され、他者に伝わり、受け止められる。そのことの意味は、「葛藤が解消される」という点にではなく、「ちゃんとあがいた」と葛藤のプロセス自体に意味が見いだされる』ということと似ている。

 Cさんは、言葉にならなかった自分という存在について語る雰囲気が醸成される心理相談室という環境で、その語りにしっかりと耳を傾けてくれる人が居て、語りを受けとめてもらい、決して悩みが無くなることはないのだけれども、自分なりに自分を何とかしていこうという試行錯誤のプロセスに意味があったのだろう。


(*1)貴戸理恵(2022)「生きづらさ」を聴くー不登校・ひきこもりと当事者研究のエスノグラフィ 日本評論社


#15に続く

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